数学力調査

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その15)─新井紀子氏による日経ビジネス Associe」誌の記事について

思わず目を疑うような記事を見た。「日経ビジネス Associe」誌2012年10月号に掲載された、新井紀子氏による「サバイバル力を試す数学問題」なる記事である。4ページにわたって日本数学会による大学生数学基本調査の問題のうち、問1-1,問1-2,問2-1,問3の4題を…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その14)─雑誌「数学文化」第18号の竹山論文をめぐってV─

雑誌「数学文化」第18号に、『問題提起としての「大学生数学基本調査」』と題する竹山美宏氏の論説についての検討を行っていた。 「欲望論的アプローチ」との関係について 「4.おわりに」の中で竹山氏は次のように述べている。 いかなる調査であれ設計者の…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その13)─雑誌「数学文化」第18号の竹山論文をめぐってIV─

雑誌「数学文化」第18号に、『問題提起としての「大学生数学基本調査」』と題する竹山美宏氏の論説についての検討を行っていた。今回は、竹山氏がこの調査で測ることを意図した学力のうち第3のものについて検討したい。 学習指導要領が設定する「数学のよ…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その12)─雑誌「数学文化」第18号の竹山論文をめぐってIII─

雑誌「数学文化」第18号に、『問題提起としての「大学生数学基本調査」』と題する竹山美宏氏の論説についての検討を行っていた。今回は、竹山氏がこの調査で測ることを意図した学力のうち第2のものについて検討したい。 「わかる」と「できる」の違いにつ…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その11)─雑誌「数学文化」第18号の竹山論文をめぐってII─

雑誌「数学文化」第18号に、『問題提起としての「大学生数学基本調査」』と題する竹山美宏氏の論説についての検討を行っていた。 今回は、その中の「3.出題意図」を取り上げたい。 大学入試問題の相対化について 3.1節「設計方針と本調査が対象とする『学…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その10)─雑誌「数学文化」第18号の竹山論文をめぐってI─

雑誌「数学文化」第18号に、『問題提起としての「大学生数学基本調査」』と題する竹山美宏氏の論説が掲載された。 これまで、大学生数学基本調査に関してまとまった形で公表されているものは、日本数学会公式のものか、新井紀子氏単独に依るものか、新井氏…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その9)─雑誌「世界」の新井・尾崎論文をめぐって─

雑誌「世界」5月号(岩波書店)に、「『空想主義的』教育改革がもたらしたもの─大学数学基本調査の結果から」(新井紀子・尾崎幸謙)が掲載された。今回はこの記事を取り上げて、ここまでに指摘してきた論点に即して問題点を列挙してみたい。 あえて冒頭に結…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その8)─続・報告会に参加して─

新井紀子氏の発言について、報告会における具体的な発言を取り上げてコメントしたいと思う。 私は今回の報告会で表明された新井氏の見解を批判的に検討したい。新井氏の見解がどの程度まで日本数学会、あるいはその会員の間で共通認識化しているかという点は…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その7)─報告会に参加して─

日本数学会教育委員会主催のシンポジウム「第1回大学生数学基本調査の報告」に参加してきた。報告書の抜粋が資料として配布された*1。私は今回配布された報告書の抜粋やシンポジウムでの各氏の発言などについて、強い違和感を覚えているし、また少なからず憤…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その6)─まとめ─

(その2)から(その5)にわたって、日本数学会が行った「大学生数学基本調査」とその結果分析に関する疑問点を述べ批判を書いてきた。全体を通してまとめておきたい。 私は今回の調査を行ったことそれ自体は評価している。その労に敬意を表したい。というの…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その5)─報道とのギャップや関連コメントなど─

「ゆとり教育世代」と今回の調査結果の関係が不明確である。 今回の「大学生数学基本調査」は複数の報道機関で報じられ、その多くが「ゆとり教育世代」と「学力低下」を結びつける内容のものであり、また情報を受け取る側も、「ゆとり教育世代」の「学力低下…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その4)─「論理」の氾濫─

今回の「大学生数学基礎調査」の報告書概要版とそれに基づく「数学教育への提言」の中には、「論理」という言葉がふんだんに使われている。しかし、それらの言葉や文脈は、詳細に見てみるとどのように定義されるものかが曖昧であったり、「論理」と「数学」…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その3)─結果の分析について─

今回の調査目的は、冒頭から抽象的である。「高等教育を受ける前提となる数学的素養と論理力」とは何かということが全く定義されていない。 基本調査に至る経緯の中で、 「1.読解・表現などの国語力 2.抽象的・論理的思考力 3.知識に対する意欲や忍耐力とい…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その2)─問題およびその正答例の妥当性について─

今回の調査は、「高等教育を受ける前提となる数学的素養と論理力を大学生がどの程度身につけているのか、その実態を把握」することをひとつの目標に行われたものである。 用いられた問題は3つのステージ合計5問であった。調査票+問題はこのpdfファイルにあ…

日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その1)

日本数学会が「大学生数学基本調査」を行い、それに基づいて、2012年2月12日に《「大学生数学基本調査」に基づく数学教育への提言》を発表した。 2012年3月11日現在、まだ「大学生数学基本調査」の正式な報告書は発表されておらず、日本数学会のページでは、…