科学ジャーナリスト・内村直之氏による前京大総長・松本紘批判への疑問(その1)

前京大総長の松本紘氏が、野依良治・前理化学研究所理事長の後任として調整が進んでいるとの報道が出た。
これについて、科学ジャーナリストの内村直之氏が以下で引用するような一連のツイートで批判的に言及している。

私は、内村氏の批判は非常に一方的で、丁寧な補足説明や自らの発言を裏付ける根拠を明示しない限り、不当な誹謗中傷や人格攻撃をしていると判断せざるを得ない。

(実は以下に引用する内村氏のツイートに、axion811氏が批判的なコメントをつけているが、2015年3月22日現在、内村氏は一切応答していない。
もちろん私はaxion811氏ではないことを明言しておく。axion811氏の発言にもやや行き過ぎていると感じられる箇所があるし、氏の発言全てに私が賛同できるわけではないことも念のため明示しておく。
また私は現在も過去も京大総長選挙に対して投票権を持ったことはないことも付け加えておく。)

私自身、松本氏の「改革」の方向性がすべて妥当なものであると考えているわけではない。
松本氏が総長として行った様々な事柄の中に、学内の意向を十分に聴取していなかったり、学内に十分に説明することを怠っていたものがあるかもしれない。
少なくとも学内には松本氏に対する批判的な意見はいろいろあるのだと想像する。
またiPS細胞に関係する点について、たとえば松本氏の会見の中で、奈良先端科学技術大学院大学が山中氏を採用し研究活動を支援してきたことへの言及や敬意が必ずしも十分には述べられていなかったのではないかと感じている。
さらに、後でも引用する松本氏の著書『京都から大学を変える』(祥伝社新書2014年)の中にも、内容的に齟齬のある記述が含まれているのではないかとか、必ずしも同意できない点もいろいろある。松本氏の主張していることと実際にやっていることとの間に乖離もあるのかもしれない。私自身、松本氏の式辞を直接聞いた経験が何度かあるし、また上記の本の中の記述にも表れているように、自分の経験に立脚した話し方をかなりはっきりとされる方だという印象はある。そういう意味で、松本氏の様々な言説や方針に、自身の「成功体験」が強く反映され過ぎていて、一般的な妥当性を十分に保証できていないのではないかという論点はありえると思う。

そうした点で松本氏の行ってきたことにいろいろな問題点がある可能性はあり、そのことの検証作業は必要だと思う。
しかし、たとえそうだとしても、内村氏の発言は行き過ぎていると私は考える。以下、まず内村氏の一連のツイートを見る。

内村氏による松本批判ツイート

時系列順に引用する。











内村氏による松本批判の問題点

内村氏による上記のツイート群には、複数の問題点がある、と私は考える。大別して次の3点を指摘しておきたい。

  1. 総長選挙の内部事情を公けの場で明らかにすること。そしてそこに重大なミスがあったこと。(→その2
  2. 松本氏の業績についての根拠を明示しない独断。(→その3
  3. まだ成果について判断することができない事柄についての根拠を示さない独断。(→その4

以下、順を追ってみていきたい。