日本数学会による大学生数学基本調査への疑問(その1)

日本数学会が「大学生数学基本調査」を行い、それに基づいて、2012年2月12日に《「大学生数学基本調査」に基づく数学教育への提言》を発表した。
2012年3月11日現在、まだ「大学生数学基本調査」の正式な報告書は発表されておらず、日本数学会のページでは、報告書の概要版、実施問題とその正答例、FAQが公開されている段階である。

日本数学会の行った記者会見の様子を含めた報道が行われた当初から、私はこの調査とその結果分析には様々な疑念を持っていた。
今回、日本の数学は大丈夫なのか(水無月ばけらのえび日記)がいくつかの観点で問題点を指摘していることを知り、
私も自身の見解をまとめておく方が良いかと思い、ここに記しておくことにした。*1

なお、私は日本数学会の会員ではないことを予めお断りしておく。

私が今回の調査とその結果分析に関して問題だと感じている点を大きく分けると次の3点になる。

  1. 調査に使われた問題およびその正答例の妥当性に疑念がある。(その2)
  2. 日本数学会が公表した概要版における結果分析の内容や議論の姿勢に疑念がある。(その3)(その4)
  3. 報道された内容と実際に日本数学会がどのように考えているのかという点に著しい乖離がある可能性が拭えない。(その5)

この3点について順次述べていきたいと思う。

*1:水無月ばけら氏は「調査はほとんど失敗と言って良いのではないか」と批評しているが、私はそこまで断定するつもりはない。